パーキンソン病のマッサージ治療とリハビリ
患者ご家族から、「ケアマネージャーから訪問マッサージというものがあると聞いて連絡した。パーキンソン病で本人はリハビリに意欲がある」というお話でした。
パーキンソン病の患者の、拘縮と固縮の症状が強い側の肩甲骨周辺と上肢一肢の施術(肩、肘、手首、手指に対する他動・介助・抵抗運動、ストレッチ、指圧マッサージ)は20分程度かかります。
動きが悪い方の施術と訓練だけではなく、動きが良い方の上肢と下肢のマッサージとリハビリを十分に行うことも非常に大切です。一肢ずつ、抵抗運動を含むマッサージを行います。その後、体幹のストレッチを行います。
この患者様は、とにかく腰の指圧が涙が出るほど気持ちよいということで、週2回の施術日を毎回楽しみにしているということでした。
療養されているご高齢の方や、パーキンソン病、脳梗塞後遺症の持病がある方は、腰の指圧を本当に喜ばれる方が多いです。
次に、立ち上がり訓練、立位保持訓練を行いますが、効果を考えた立ち上がり訓練、立位保持訓練は、バイタルサインの確認や、お声かけなど少しの休憩を挟み、姿勢を整え、繰り返し行います。
歩行訓練は、「歩く」という非常に高機能な動作を行うだけでも (特に普段歩く機会が少ない方には) 意義がありますので積極的に行います。後方への転倒などに注意を払いマイペースで歩行訓練を行います。
歩行訓練も適度に休憩をはさむなどして、繰り返し行える方は反復して行います。
立ち上がり訓練と歩行訓練を合わせて (休憩を入れて) 20分程度行うこと (行えるようになったこと) により効果を示します。
患者の、立ち上がり訓練、歩行訓練の最中とその後の会話内容や様子から、立つこと、歩いたことに高揚されて喜ばれていることが伝わってきます。
この患者が訓練を始めたばかりの頃、基本動作訓練は立ち上がり訓練のみで疲労により3分程度で終了していました。
現在の施術時間は1回60分です。体調に合わせて60分でできる範囲のリハビリとマッサージ治療を行います。
施術中から別れ際まで時事のお話しと趣味のお話しが続きます。私の方が会話で笑わせていただいていることが多いように思います。
上記のパーキンソン病の患者様に対する60分の施術内容は、短期的、長期的な両方の観点から、仮にこの患者様の体幹と四肢に対して、定期的に20分程度の簡易的なマッサージと機能訓練を行った状態と比較すると、その状態とは比較にならない状態 (四肢の関節と筋肉全体に柔らかく動きのついた、筋力が保たれた状態) として身体は保たれます。
※ 下記はパーキンソン病に関連する記事です。
パーキンソン病について
90年代以降、パーキンソン病の治療は飛躍的に進歩を続けています。現在では、早期から適切な投薬を行うこと、及び早期から充分なリハビリを行うことが重要視されています。
私自身は在宅において、パーキンソン病が持病である複数の患者様 (練馬区在住の方) のリハビリを行ってきた観点から「筋肉を動かすこと」に関係の深いパーキンソン病について記載していきます。
パーキンソン病の運動症状
パーキンソン病は、脳内の伝達物質であるドーパミンが不足することから、うまく身体を動かすことが難しくなります。主に表れる症状として以下の運動症状があります。
➀ 安静時振戦 (ふるえ)
パーキンソン病が持病である方々の多くが最初に気づく兆候として「ふるえ (安静時振戦) 」が挙げられます。安静時振戦と呼称される通り、テレビを見ている時などリラックスした状態でいるときにふるえが見られます。
➁ 動作緩慢・無道 (動作が遅くなる)
特徴としては、意識した動き、無意識の動きに関わらず動作が遅くなり、素早い動きを行うことが難しくなります。また会話をする際に抑揚がなくなります。
➂ 筋固縮 (筋肉のこわばり)
他者が患者の肘関節や手首、膝関節や足首を動かす際に、患者がリラックスできず筋肉が緊張した状態のままになり各関節がスムーズに動かなくなります。
筋力は正常な状態にありますが、動きに対する指令がうまくいかないために筋固縮がおこります。
➃ 姿勢反射障害 (うまくバランスがとれなくなる)
他者が患者を手で押すと元の姿勢に戻れなくなります。バランスを保ったり、急に止まったりする動作ができなくなり、転倒へと直結します。
姿勢反射障害は進行すると、各種運動や歩行訓練などのリハビリを行うこと自体が難しくなってきます。
➄ 歩行障害
パーキンソン病の影響から出る歩行障害の特徴として下記の状態があります。
➀ 歩いているうちに前傾姿勢が強くなり、突進するような状態になる (突進歩行)
➁ 前後左右の、一歩の歩幅が狭くなる (小刻み歩行)
➂ 歩き出しの第一歩が出にくくなる (すくみ足)
➃ 歩行時の自然な腕振りがなくなる (腕振りの減少)
上記5つの運動症状は共通して、脳からの指令がうまく働かずに起こっている運動症状です。治療とリハビリの開始が遅れると症状が進行します。
重要な事は、早期に治療と充分なリハビリを開始すること、及び、治療とリハビリを継続して行っていくことです。
練馬区の在宅の現場で、進行したパーキンソン病の症状をもつ患者様のリハビリを行っていますが、生きている限り、リハビリを始めることに遅すぎるということはありません。
私自身、多くの患者様の「立ちたい」「歩きたい」という意欲と、立った時、歩いた時の高揚感を日々体感しています。
リハビリの肉体的な効果は勿論ですが、リハビリを行うことで生まれる気持ちと、充分なリハビリや治療をいつでも行える環境が身近にあることは患者様にとって重要な要素です。