リハビリと痛み ペインクリニックについて
高齢期に入ってから腰椎圧迫骨折を起こし、痛みとつき合いながら長期間リハビリを行ってきた元新聞記者の島田とみ子さんによるリハビリ体験記「転んだあとの杖」から内容を引用させていただき、高齢者のリハビリと痛み、ペインクリニックについて記載していきます。
引用元 : 島田とみ子『転んだあとの杖ー老いと障害とー』(未来社・2000年・55頁4行目以下・68頁12行以下・69頁7行目以下)
まったく、痛みさえとれればどんなによいか、とたえず思い続けた。だが400メートルを我慢しながらでも歩けるようになったのは、やはりペインクリニックの効果だろう。
先生が毎回のように注意されるのは「努めて歩きなさい」ということであった。私の骨粗鬆症は相当に進んでいるので、歩くことによって骨が強くなると先生は強調された。ペインクリニックは、針をさす場所のほんのすこしのちがいで、身体の反応は違ってくる微妙な治療であり、それだけに熟練の必要なものと思った。(原文ママ)
島田さんがリハビリを行う中で「痛み」が常にあることが記されています。
リハビリと痛みは近い関係にあります。
私自身も下肢のリハビリを長期間行った経験がありますが、強い痛みを伴いました。痛みは自分にしかわからず、辛いものです。
島田さんの痛みはとても強いもので、その対処として複数のペインクリニックを利用し、紆余曲折を得てうまくいったことが記されています。ペインクリニックで行われる治療は繊細な治療であることは間違いないようです。
私自身は過去にスポーツをしていた時期に、足に痛み止めの注射を打って「こんなにも楽になるものか」と思った経験がありますが、同時に医師から「ステロイドは骨をもろくするから何回もやらないほうがいい」と指摘されたことを覚えています。
人間にとっての信号である「痛み」を薬剤によって取り除き続けることには疑問もあります。
依存性も気になるところですが、あまりに辛い痛みを我慢し続けることは身体によいとは言えません。
島田さんも、一時的にでも足腰の強い痛みから解放されることにより、気持ちが前向きになり、リハビリが上手く進んだことを記載されています。
私自身の経験からも「痛み」を我慢しすぎることはよくないと言えます。身体が本能的に痛む姿勢を避けるために、筋肉の緊張と硬化、可動域の制限を生み、悪い姿勢と動きに直結していきます。
「怪我をかばって再び怪我をする」「怪我が怪我を生む」という状態を生みます。
私自身、実際に経験しましたが、足首から膝、膝から股関節、股関節から腰と、見事に連動して痛めていきました。
痛みを我慢して行うリハビリや運動は逆効果になるケースが多々あります。身体のバランスを崩すことが1つの大きな原因です。無理は禁物です。
リハビリや運動行っている中で痛みに悩む場面があれば、まずは安静にして休息をとり、ストレッチ、関節可動域訓練などで身体と筋肉のバランスを整えることを実行してみましょう。
私自身の経験や、私が介入した患者様の場合では、安静と休息、ストレッチと関節可動域訓練、各種のリハビリによって痛みが緩和されるケースが多くありました。
強い痛みでお悩みの方は、休息、ストレッチ、関節可動域訓練、冷やす、温める、湿布、投薬などの基本的な治療とあわせ、バランスを考慮してペインクリニックを試してみることも1つの方法として考えられます。
※ 『 (ペインクリニックの) 先生が毎回のように注意されるのは「努めて歩きなさい」ということであった。』と島田さんは記されています。
ペインクリニックの担当医も「痛みはとってあげたいが、薬の影響で島田さんの骨はもろくなっている。薬で痛みを抑えつつ、しっかり歩いてしっかり食べて、骨を強くするように」と、バランスをとることを心がげていたことがうかがわれます。