老健のリハビリの内容と実情 集団体操 集団リハビリの効果

老健のリハビリの内容と実情

老健のホームページを閲覧すると、リハビリの内容の充実や、理学療法士、作業療法士の数の充実を提示している施設が多く見られます。


しかし、実際の老健でのリハビリの内容は公に提示している内容とはかけ離れている実態があります。
私自身が在宅の現場で訪問マッサージ、リハビリ業務を行ってきた経験、そして現場の患者様ご本人とご家族の多くの意見 (本音) から言える事実です。


2021
年現在の、老健のリハビリの内容を実体験を交えて記載してまいります。まずは下記枠内の事例をご覧ください。
(下記の枠内の事例は、当院が実際に体験した老健のリハビリに関わる事例です)

  

  

過去の事例ですが、当院のご利用を開始してから2年経過していた、リハビリに意欲的な要介護度4の練馬区在住の患者が、ご家族のご事情により老健に3ヵ月程度入所することになりました。

  
入所の際、患者ご本人とご家族が当院の介入を望まれましたが、老健から「外部のサービスは受け付けておりませんのでご了承ください」とお話しがありました。

  
その結果、当院の介入は一時中断することになりました。 (訪問マッサージの制度上、健康保険を利用することを前提として当院は介入できませんでしたが、自費での介入、訪問は可能でした)

  
その後、老健から「理学療法士による高度なリハビリがとても充実しているので、安心してお任せください」とのお話しがあり、ご本人とご家族は「期待しています」とのことでした。

  
私は患者ご本人とご家族から、老健のリハビリの内容についてのお話しを聞き「高度なリハビリとは何か。リハビリは地道な作業の連続だが」と思慮し、これまでの経験からも、ご本人とご家族にとって難しい結果が予想されましたが、私にはどうすることもできませんでした。

  
その老健はホームページ上で、理学療法士の豊富な人員と、リハビリの設備の充実を提示していました。

  
3ヵ月後 (当院の訪問マッサージのご利用を再開) 老健からご自宅に帰られた患者様の上肢と下肢、体幹は、共に拘縮と筋力低下が明確に進行し、移乗の際に立ち上がる力、座位を保持する力が著しく低下していました。

  
手指、上肢の拘縮の進行も著しく、3ヶ月前まで自力で開くことを維持していた手指が、介助しても、手を開くことができず、爪が食い込み、手首の可動域は大きく制限され変形した状態になっていました。

  
老健入所前は、よく笑い、柔らかい表情をされていましたが、表情も厳しいものに変わっていました。

  
上記の患者は、老健入所以前の2年間、当院による訪問マッサージ、リハビリを1回60分週2回、介護保険適用のリハビリを1回40分週2回ご利用されていました。

  
その中で、上肢のリハビリ、立ち上がり訓練、立位保持訓練、歩行訓練、バランス訓練、下肢の筋力訓練を充分に行っていました。

  
リハビリの最中と終了後には高揚感が見られ、リハビリとマッサージの時間を心から楽しみにして下さっていました。

合わせて、ご家族の介助で1日10分程度のリハビリを継続して行い、全身の拘縮、筋力低下、ADL低下 (日常生活動作機能の低下) の進行は極めて緩やかに保たれていました。

  
ご本人は聡明で我慢強い方でしたが、老健からご自宅へ戻られた際に、自ら次のように述べられました。

  
「施設 (老健) では理学療法士が週に何度か、1日に1回来て、10分~15分、腕か脚をマッサージするか曲げ伸ばしするだけ。1日でやるのはそれだけでした。後は (背もたれありの状態で) 座っているか寝ているだけ。堪りませんでした。
介助する家族のことを考えると、あそこ (老健) でのことは悔やまれるんです。 (リハビリを) やってもらいたいが、やってくれとは言えない立場にある」

  
常に周囲を気遣いながらユーモアにあふれ、言うべきことは言う、リハビリに非常に積極的な練馬区 在住の患者様のご意見でした。

  

  

私自身、東京や埼玉、練馬区で訪問マッサージ業務に関わってきた中で、上記のような出来事は珍しい経験ではありませんでした。

  
老健とは、介護を必要とされている方々が、今後在宅で生活を送るために、専門的なリハビリや医療ケアを行う施設とされています。

  
しかし、前述の老健が特別なわけではなく、多くの老健や介護施設でのリハビリ、機能訓練と称されるものは、実際には内容がきわめて不十分な状態にあります。

  
人員不足や制度が原因でこのようなことが常態化していること、よくあることが問題であり、手の打ちようが無いわけではなく、なんとなくそうなっていること、当然のようにそうなっていることに問題があります。

  
介護施設として外部サービスを柔軟に利用するべき状況ですが、 上記のケースでも、当院は患者と2年のお付き合いがあり、患者の強いご希望があったにも関わらず当院の介入を認められませんでした。

  
組織として腰が重たい一面もあり、合理的な理由もない状態で外部サービスを介入させない習慣もあります。


 

  

  
  
  

老健・老人ホーム・デイサービスで行われるリハビリの内容 集団リハビリ 集団体操の効果について

前述にあるようにリハビリ特化型を謳っている施設も含めて、老健、老人ホーム、デイサービスなどで行われるリハビリの現場では、リハビリを行う際に見守りや介助を必要とする比較的要介護度が高い方は、レクリエーション、集団体操、集団リハビリ、マシンリハビリには実質的に参加自体が難しい状態にあります。

  
要介護度が高い方が、実際に受けられるリハビリと称されるものは、受けられたとしても、週に何度か行われる1日1回10分~15分程度の個別リハビリのみであり、あとは実質的に椅子に座っているかベッドに寝ている状態となります。

  
老人ホームやデイサービスのスケジュール用紙上では充実したスケジュールに見えても、実際には比較的要介護度の高い患者様の、筋力低下や拘縮が進行していく環境にあります。

  
また、老健や老人ホーム、デイサービスで行われる集団体操、集団リハビリは、最初から1人で十分に体操をできる方々や身体を動かせる方々が行うものです。

  
体操をやろうとしても手足の動きが不十分な方々や、体操をできない方が座って見ている光景、参加していない光景はよく見られます。また、当院の患者の中で、「あれ(集団体操)は、自分はできないから辛いんだよ。全然動かせないから。見ているだけになっちゃう」という同じような意見はよく聞かれます。

  
基本的に、集団体操、集団リハビリは、ほぼすべてのメニューが背もたれのある椅子に座った状態、介助なしの状態で行われますので、あまり効果のあるリハビリにはなりません。(何もしないよりは遥かに良いですが、肝心の下肢の筋力と骨がほとんど鍛えられません)

  
立ち上がる、歩く、トレーニングマシンを利用する、などを行うには、介助者がいなければ転倒などの事故に直結しますので、介護現場でリハビリの内容を充実させるには必ず介助者が必要になります。

  
リハビリ特化型を公に提示する老健やデイサービス、老人ホームで、実際には必要最低限の個別リハビリさえ行われていない要因は、人員不足 (マンパワー不足) と各事業所の方針にあります。

  
特に民間の施設では、個別リハビリには人件費がかかるために充分な個別リハビリは行われません。


 

  
  
  
  

病院と高齢者のリハビリ

病院が絡む事例を挙げます。

  
私自身が介入していた、練馬区 在住の複数の患者が、下肢を骨折後、病院にご入院されましたが、手術後に最低限度受ける必要があるリハビリさえ受けられなかった患者も多く、ご自宅や施設へ戻られた際には、入院中はほとんど寝ていたであろうことが誰の目から見ても分かるほど、筋力の低下と関節の拘縮が見られました。

  
病院では、高齢者にリハビリをさせずに安静を促すケース、高齢者に向き合った対応を行わないケースが未だに多く見られます。

  
手術後に病院で充分なリハビリを行うことにより、毎日介助者と徒歩で散歩に出かけることができた筈の患者様が、手術後、寝かせきりにすることによって、すべてにおいて車椅子中心の生活になる、ほとんどベッドから動かなくなるなど、ご高齢の方が病院で必要なリハビリをする、しないでは、実際にそれだけの差異が生まれます。

  
上記の、骨折入院されて、退院後に再び当院が介入した練馬区 在住の複数の患者はリハビリを嫌がる方々ではありませんでした。

  
ご高齢の方、介護を必要とされている方が必要なリハビリを行う中で、リハビリに積極的ではない患者や、認知症状をもつ患者に対して、うまく飽きずにリハビリをしていただくために考慮して粘り強く接していくことがリハビリ業務の大切な要素です。

  
個別で地道なリハビリを行うにはそれだけの人員が必要であり、リハビリを介助する者にもリハビリへの意識の高さや目的が必要となります。

  
しかし、現実として大きな組織である病院や施設では、従業員同士 医師、看護師、理学療法士、ケアマネージャーなど の意見の相違が生まれます。

  
また、組織的な現場では、リハビリを行う人員に裁量権 (メニュー決定、時間の決定) がない場合が多く (組織の方針や1人のリーダーの裁量権が優先される) そのことが無責任なリハビリ業務を行うことに直結しています。

  
結果的に人員不足の影響も相まって、高齢者や認知症状をもつ方々に対して十分なリハビリをまったく行っていないケースが多く見られます。

  
実際に、高齢者や認知症状をもつ方々に対して、今後を左右する必要最低限度のリハビリさえ行えていない病院は非常に多く存在しています。

  
施設や病院の利用者数 (入居者数) と、常勤の理学療法士、作業療法士の数を比較すれば、多くの高齢者が充実したリハビリを行うことは不可能であることが分かります。


 

  
  
  
  

現実的に高齢者の現状に対応できる訪問マッサージ

在宅や施設の現場で、実質的な訓練が不十分な中、ご自宅や施設に訪問が可能であり、健康保険を利用して、1回300円~600円程度で十分な個別リハビリをご提供できる健康保険を利用した訪問マッサージが存在しています。

  
私自身は、在宅で療養されている方々とご家族の皆様にお喜びいただいており、訪問マッサージは意義のある仕事と体感しています。

  
しかし訪問マッサージでは、訪問マッサージの不正請求という問題と、訪問マッサージ事業者が、介護事業者やケアマネージャー、老人ホームに対して患者紹介料を支払っている問題があります。

  
この問題から、患者とご家族に向き合い、1回40分~60分の個別リハビリを提供している訪問マッサージ事業所が利用されず、介護事業者やケアマネージャーに紹介料を支払い、次々と患者の紹介を受け、1回10分~20分の流れ作業を繰り返し行う、ビジネス目的の訪問マッサージ事業所が利用されるケースが多くあります。

  
ビジネス目的の訪問マッサージ事業所のイメージにとらわれず、当院に限らず40分~60分の時間を確保して個別リハビリを行う訪問マッサージ事業所を、多くの介護、在宅の現場で実際にお試しいただくことがこれからの介護、在宅医療社会にとって良い影響を及ぼすことを確信しております。

  
現状では、患者とご家族に成り代わって、医療機関、介護事業者、ケアマネージャーの方々が、各在宅サービス事業所をご選択いただくケースが多くあります。

  
ご事情は様々あるかと存じますが、目の前の利用者ご本人とご家族に向き合い、責任を持って事業所をご選択いただくよう心よりお願いいたします。

  
  
  
  
※ 理学療法士、あん摩マッサージ指圧師などの国家資格名は、在宅で行うリハビリ業務における専門性の優劣を測る指標にはなりません。

  
病院で行うリハビリの業務と、1人で在宅の現場に赴き、在宅でリハビリの業務を行うことは別の職業と言えます。

  
また、資格学校で学ぶことと、在宅の現場で実際に患者に向き合い経験を積むこととでは、頭と身体で覚えていく物事の質と量は比較になりません。


理学療法士、作業療法士、あん摩マッサージ指圧師などの各資格者がご提供するサービスを実際に見て体感していただくことが、事業所をご選択される上での最善の方法です。

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